最近読んだ本
遠藤周作の「海と毒薬」。実は2年くらい前に一度読んだんだけど、後半くらいの展開をどうもハッキリと思い出せなくてもう一回読んじゃいました。
読んでるうちに大体思い出したんだけど、やっぱりすごい面白かったです。やっぱり遠藤周作は一番好きな作家かも。
話は有名だからみんな知っているかもしれないけど、戦時中に日本で行われた外国人捕虜の生体解剖を扱ったものです。
生体解剖の内容は
- 第一捕虜に対しては血液に生理食塩水を注入し、その死亡までの限界可能量を調査す。
- 第二捕虜に対しては血管に空気を注入し、その死亡までの空気量を調査す。
- 第三捕虜に対しては肺を切除し、その死亡までの気管支断端の限界を調査す。
と、残酷で狂気を感じさせるもの。
なんだけど、果たして手術に関わった人たちは異常者だったのかというとそうとも言えない。医学の世界ならではの権力への固執が強い一面もあるけど、話の中心に出てくる勝呂医師はそんなこともなく、手遅れと分かっていても自分の患者を見放せない人間らしいところが目立つ。そんな人が生体解剖という殺人現場に特に大きな選択もなく流されるように入っていく。そこらへんの正常と異常の境の曖昧さがすごいです。
罪の意識が社会に対してだけある場合どうなるかとか正常と異常に本当に違いがあるのかとか、「罪」や「異常」という言葉の再定義を促しているようにも取れました。
まぁ、しかしこの人は描写や読ませる技術がすごいからなにかと生々しいです。帰りの電車で読み終わって、本当は夕飯に鉄火丼を買って帰ろうと思ってたんだけど、さすがに止めました。ほら、なんか、ねぇ。。。
- 作者: 遠藤周作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1960/07/15
- メディア: 文庫
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